TBSディレクター・伊藤雄介氏インタビュー


 今回は、TBSテレビでドラマディレクターとして働く伊藤雄介さんにインタビューを敢行!「テレビ局で仕事をする上で大事にしていること」と「テレビ業界の就活をする上で大切なこと」の二つにスポットを当て、お話を伺いました。とっても“ため”になります!就活を控えた、3.4年生はもちろん、テレビ業界にちょっとでも興味のある1.2年生も必読です!

まず、テレビ局の仕事について教えていただけますか?

 

TBSは、大きく分けると上記の図のような機構です。自分がいる制作局は、ドラマやバラエティを作ります。クリエイティブ部門とビジネス部門の間にある「編成局」は、1週間の番組編成を立案するところです。

現在、視聴者のテレビ離れが進み、テレビ業界は激動の時代を迎えています。ビジネス部門は、テレビのコンテンツをどうやって売っていくか考えることを大切にしています。制作局も日々「今どんなものが求められているか」を考えて、作ることを大切にしています。

 

制作局において、プロデューサーとディレクターの違いは何でしょう?

 

ドラマにおけるプロデューサーは企画、脚本、キャスティング、お金などを管理する仕事が主です。

ディレクターはロケ場所を探したり、セットをどうするか、照明をどうするか、芝居をどうするか、カメラ割りはどうするかなど現場での仕事が多いです。

 

企画は、プロデューサーの仕事だとおしゃっていましたが、ディレクターは企画を出せないのでしょうか?

出せますよ!例えば『半沢直樹』は、福澤さんというディレクターが、池井戸潤さんの『オレたちバブル入行組』と『オレたち花のバブル組』を読んで面白い!と思って持ってきた企画です。

 

話は変わりますが、伊藤さんご自身がテレビ業界で働く上で大切だと思うことは何でしょうか?

大きく分けて二つあります。

一つ目は自分が何を面白いと思うか、つまり『自分の聖域』を大切にしてほしいということ。

面白いと思う対象は、「野球」でも、「食べ物」でも何でもいいんです。そして、その面白いことを人にどう伝えていくか、どうやったら多くの人の心に突き刺さるのか、日々考えていくことが大切です。

二つ目は、表現したい!という気持ち。

まず、この「表現したい(expression)」という気持ちは、「印象(impression)」から生まれます。どういうことかというと、例えば「面白い映画を見た!」という印象を受けたとします。そうすると、自分も「こうやって多くの人を楽しませたい!」って思いませんか?

例えば、スポーツを見て、感動し涙して、その受けた印象を表現しようとします。表現手段は映画になるかもしれません。これが「表現したい!」という気持ちにつながるんです。だから、まずたくさんの「印象(impression)を得ることが大切です。

 

ドラマをやりたいと思ったきっかけはなんでしょう?

きっかけは二つあります。

文学部英文科のアメリカ文学専攻だったのですが、必修なのに5人くらいしか生徒が出ていない授業がありました。自分はその先生の話が面白くて、毎回出ていたんです。ある日、先生が言った言葉がとても印象的でした。

「小説は将来なくなるかもしれない。だけど僕はドラクエがとても好きでね、思えばその中にも物語はある。ゲームの中にも物語はあるんだから、物語は絶対になくならないと思うんだ」

この言葉を聞いたときに、「自分は物語がやりたいんだ!」と気づいて、テレビ業界を志望しました。

もう一つは、学生時代ワイドショーはちょっと苦手だったんです。そんな時に「金八先生5」を見たんです。ドラマの中で、「汚い言葉を使えば、心が汚くなる。綺麗な言葉を使えば、心が綺麗になる。だから僕はあえて、綺麗事を言うんだ」という金八先生の言葉がとても印象的で、ワイドショーや報道番組みたいに、世の中の真の姿を映すのもTVだと思うけど、自分は「綺麗事を言うドラマが作りたい!」って、その時思ったんです。

この二つのきっかけは、今の仕事をする上で大切にしている軸にもなっています。

 

就活生が特に気になることなのですが、テレビ局に入社する人たちの特徴はありますか? 

各局、各会社ごとに様々な特徴はあると思います。僕の主観でいうと、TBSはインテリと熱い人が多い気がします。

編集とか、演出とか、撮影とかのスキルを持っている人の方が有利なの?と不安になる人もいるかもしれませんが、スキルとかは入ってから学べばいいと思うので、必要ないです。

 

ESを書く際に大切なことは何でしょうか?

採用側が知りたいのは、「あなたはどんな人ですか?」ということと、「そんなあなたは、どんなことを社にもたらしてくれますか?」ということです。それを短い文章で伝えるには、素材選びと表現力の2つが大切になってきます。

素材選びのポイントは、いかにキャッチーなものを選ぶかということ。キャッチーなものというのは、面白い、珍しい、分かりやすいものなどを指します。

そして表現のポイントは、抽象と具体の組み合わせです。抽象さというのは、「一言で表すとどういうことか」で、「私はしつこい人間です」でも何でもいいです。文章の最初か最後に一つだけ抽象を入れましょう。抽象を二つ入れると読んでいる方が混乱するので注意してください。具体とは、自分が体験してどう思ったか!?などのエピソードです。エピソードを語ることによってその人のオリジナルになります。

この2つのポイントを盛り込み、読んでいる人が映像としてイメージしやすいESを目指してはどうでしょうか。

 


 

気になる!TVディレクターのお仕事 一問一答コーナー

ここからは、参加者の皆様から出た質問に対して一問一答で伊藤さんに答えていただきました。

ずっと気になる!と思っていたあなたの疑問も、ここで解決!?

 

Q:ディレクターが芝居の指示を出すときに、かたくなな反応をする役者さんはいますか?

いますよ。特に、大御所の役者さんに伝えるのが若手のディレクターとかだと、現場がピリッとします。大切なのは筋の通った指示。筋の通った指示で、役者さんが納得すれば聞いてくれますよ。

 

Q:撮影は、脚本がどのくらいできたら始まるのですか?

基本的に連ドラのクランクインは、1~2話分の脚本ができたときです。撮影している過程で、この役者うまいなと思ったら、シーンを増やしたりしています。

 

Q:番組を作る際に、見た人が幸せになれるなど、放送された時のことを考えていますか?

考えています。見た人が幸せになれるように、ただただ面白いものを作る時もありますし、一方で社会性のあるものを作る時には、誰かを傷つけてしまわないかなどを考えた上で作るようにしています。

 

Q:僕は1年生なのですが、いいESを書くために、今何をするべきでしょう?

自分の思っていること、感じていることを文章にして、ブログとかにして人に読んでもらい、評価してもらうことですかね。今は、「いいね!」の数とかで、自分の文章がどのくらい面白いかってこともわかりますし。それによって、読む方の気持ちやリズムを考えてください。あとは、面白い経験をたくさんしてください。

 

Q:仕事が苦しいと思ったときはありますか?

自分の作りたいもの、やる意味があると思うものを作れないときは苦しいです。例えば、豪華なキャスティングをすると、キャストの言いなりになることもあって、自分が目指すものが作れないことも。そういう時、無理に豪華なキャスティングをしてまで、このドラマをやるべきなのかと考えてしまいます。

 

Q:現在テレビ離れが叫ばれていますが、どう思っていますか?

とにかく危機感があります。でも視聴者の生活習慣の変化は避けられないので、どのように配信していくかを考えていく必要はあると思います。自分はコンテンツを作るドラマ制作部にいるので、とにかく面白いものを作るだけ!だと思っています。

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一問一答コーナーはいかがでしたでしょうか?

最後に伊藤さんに、この仕事でよかった!と思うことをお聞きしました。

 

最後になりますが、この仕事でよかった!と思う瞬間はどんな時でしょうか?

くだらない話で言うと、「松井珠理奈が前髪を作った」というニュースがyahooニュースの1位になっていた日に、ちょうどカウントダウンTVの収録で、生の松井珠理奈の前髪を見ることができたことです。ニュースで1位のものを、その日のうちに生で見られるというような、今に触れられる仕事であることは、よかった!って思います(笑)

笑い話は置いといて、一番はキラキラした瞬間に立ち会えた時。番組を作っていて、生の音楽とか、いい芝居とか。本物に出会えた時に、この仕事でよかったって思います。

 

インタビューは以上となります。

第一線で働いている方のお話を伺うことで、 TV局のお仕事の大変な面はもちろんのこと、

より一層魅力を感じることができました。

伊藤さん、お忙しい中、本当にありがとうございました。

ゲスト

伊藤雄介氏(テレビディレクター)

略歴

株式会社 TBSテレビ  

職種:制作局 ドラマ制作部 ディレクター (2001年度入社)

バラエティ部で、『うたばん』、『中居正広の金曜日のスマたちへ』のADを経た後、ドラマ部に異動。『金八先生パート7』などでADを務める。その後、再びバラエティ部に戻り、『うたばん』、『金スマ』、『CDTV』、『カミスン!』、『火曜曲』、『ゴロウ・デラックス』等、主にバラエティや音楽番組を中心にディレクターを務める。2012年秋、2013年春『オールスター感謝祭』総合演出を経て、再びドラマ部に異動。金ドラ『家族狩り」でドラマ監督デビュー。同時に、2014年末は『第56回・輝く!日本レコード大賞』総合演出を務める。最近の仕事内容としては、火曜ドラマ『まっしろ』ディレクター、木曜ドラマ『ヤメゴク』プロデューサー。

実施日

2015年7月2日

 



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