作文・4つの戦法


いきなり「書いてみよう!」と言われてもなかなか難しい作文。ここでは過去に白水社で出題された「急がば回れ」というテーマを事例に4つの作文のパターンを紹介しよう!

参考にしながら、自分だったらどう書くか、ぜひ考えてみて欲しい!

【方法1】スタンダードな方法

ことわざの意味を調べ、それにちょうど良いエピソードを思い出して書く。この場合は、物事はあわてて取り組むよりも、時間がかかったとしても着実な手順を踏むほうが結果的に上手くいく、といった意味なので、自分の身近なエピソードでそれにあてはまる話を思い出して書く。ただし、時系列に書いても盛り上がりに欠けると判断した場合は、作文冒頭に会話や切羽詰まっている様子をもってくるなどして読み手をひきつける。

 

【方法2】文字通り

急がば回れ、という言葉を、ことわざ通りではなく、文字通りの意味で考えてみる。この場合だと、ことわざ通りであれば「回る」は「時間がかかっても着実な方法を選ぶ」ということだが、そこをあえて文字通り「回転する」、もしくは「回転しろ!(命令形)」の意味で考えてみる。そのうえでさらに、「回ったことで急ぐことができた」という話になるように調整する。

 

2.1

実際にあったようなエピソード風。

海外旅行先で、あまり治安のよくない地域を一人で歩いている。突然、外人数名にとりかこまれて、金品を要求された。ほとんど持ち合わせがなかったが、正直に"I have no money."といっても放してもらえない。早く逃げるために、トランクス一丁の姿になることを決意。思わず"Look at me!!"と叫んでしまった。急に服を脱いだためか、彼らも少し驚いた様子。そこで私はさらに、全身のどこにも金がないことを示すために、威嚇の意味も込めてくるくると回転をしながら、再度"Look at meee!!"…おかげですぐに逃げることができた、という話。

 
 

2.2

世の中にある「回る」ものを思いつくままに書き出してみる。回転ずし、タイヤ、電子レンジ、洗濯機、山手線、地球…。そのあと、どれか一つを選んで、それが回ることによって急ぐことができた、という話になるように考える。

 

「ときは西暦2102年。地球に隕石が降ってくる!という予報がなされた。予想どおりのコースを飛んでくれば、直径500mの隕石が世界経済の中心地区に衝突してしまう。そうなれば世界は大混乱。おまけに発見が遅れたせいで、早急に対策を決めなくてはいけない。しかし、心配は無用。進歩した科学技術によって、隕石の被害も最小限に抑えることができるのだ。ミサイルで撃退?いやいや、そんなぶっそうなマネはしないのが22世紀スタイル。方法はずばり、隕石の落ちる場所をコントロールすること。でもどうやって?実は22世紀の技術では、海水と海底との摩擦を操ったり、人工地震を発生させたりして、地球の自転をコントロールできてしまうのです!隕石の落下地点に、太平洋のど真ん中の位置が来るように調整してしまうのだ。さあ、司令部の準備ができたようです。私達も一緒に、地球をほんのちょっとだけ回しましょう!あ、ここはまだ人力なので、一緒に機械の周りをぐるぐる回りますよ…」

 

厳密な科学的根拠を書くよりも、全体が「急ぎなので、回します」というテイストになるようにまとめて調整することを優先する。

 

【方法3】ことわざ自体の意味や由来を再考する

辞書で「急がば回れ」の語源を調べて、それがどういう故事から生まれ、意味の変遷を経てきたのかなどを紹介しつつ、自らの見識を加える。 また、「本当に回り道をしたほうがよいのか?」という疑問を呈してみて、検証してみるのも一つの手。

 

【方法4】メタ作文

一見テーマに関係ないようなことを書きつつ、全体を読み通してみるとそれ自体が「急がば回れ」ということわざの教えを実践しているような内容になっている。かなり高度である反面、ハイリスクなのであまりオススメはしないけれどこんな方法もある。

 

例4.1)

作文用紙の冒頭から語りだす…


「さて、僕はこの会社の採用にたどり着くまでに、まずはここに作文を書かなくてはいけないようだ。「急がば回れ」なんて、ありふれたことわざじゃないか。おそらくここに、テーマに合わせたしっかりとした作文を書けることが、採用の次のステップに進ませてもらえる条件なのだろう。ここで作文を見て、筆記試験ではまた別の試験があるのだ。きっとまた違う作文課題もあるんだろう。そうしてようやく面接。しかも一度だけではなく何度もあるらしい。考えただけで気が滅入る。他の会社だってあるのに。もう、そんなまわりくどいことをせず、5分でもいいから先に僕自身を直接見てほしい。きっと、作文ができるとか、できないとか関係なしに、採用を決めてもらえるはずだ。ああ、そんなことを考えていたら、作文なんて書きたくなくなってきた。なんてまわりくどいんだ!そうだ、人事部に直接連絡してみたらどうだろう。幸いにも問い合わせメールアドレスはここにある。よし、Eメールを書こう。うまくいけば最短ルートで内定がもらえるかもしれない。……いや、待てよ。なんて書けばいいんだ?直接の僕を見てください!なんて書いても、無視されるに決まってる。結局こっちの文章を考えるほうが大変な気がしてきたぞ。やっぱり普通にここに書いたほうがよさそうだ。ESの作文以外のところはけっこうよく書けてるし、変なEメールを出して嫌われてESを無駄にするよりましかもしれないな。さて、では「急がば回れ」にしたがって、無難な作文を書くとするか…」